経済学部・研究科について

教育と研究の方針

 どのような経済活動も,多くの人々の協働と多様な知識の結集によって成り立っています。製品を作って売るという単純な行為でさえ,何を作るのか,どうやって作るのか,作るのに必要な労働力,資材,資金の調達はどうするのかなど,それぞれに専門的な知識や技術,それらを担う人々の協力が不可欠です。そして,このために必要な知識は,人文科学や自然科学の領域にまで広がっており,そのすべてを一人で勉強してマスターすることは現実的ではありません。そこで,経済学部の卒業生には自分自身の専門分野を磨くとともに,幅広い分野の人との協働を可能にする学識が求められます。ここでいう学識とは,コミュニケーションの基礎となるよう幅広い教養や知識,および論理的思考力のことです。このような学識と専門的知識を兼ね備えた人のことをT字型人材と呼ぶことがあります。Tの縦棒の部分が深く掘り下げた自分の専門的知識,横棒が異分野の人との連携を可能にする学識の部分です。

 名古屋大学経済学部/経済学研究科は,前身である旧制名古屋高等商業学校(1920年創立)以来100年に迫る伝統の中で,まさにT字型人材を育成してきたといえます。専門(Tの縦棒)を徹底的に鍛える3,4年次のゼミと卒論研究は,一人の教員が指導する学生を10人以下とする徹底した少人数教育を厳格に実践しています。また,幅広い学識(Tの横棒)を獲得するために,1,2年次に行われる全学教育(一般教養)だけでなく,専門科目群の中に理論的アプローチ,歴史的アプローチ,事例研究,実地調査など多種多様な科目を用意しています。かつての旧制名古屋高等商業学校が,「単なる商業経済の専門学校でなく総合大学としての偉容を有する」と賞賛された,そのDNAを今に引き継ぎ,有為なT字型人材を自然に育むカリキュラムを展開しています。

 また,経済学・経営学の特徴はその総合性にあります。経済学・経営学は,第一義的にはサイエンスであり,経済社会を対象とするディスシプリンとして,普遍的に成立する抽象的な理論やモデルを志向します。そのために,先行研究を踏まえて自身の仮説を提示し,資料やデータを集めて仮説の成否を検証するという手続きが繰り返されます。他方で,経済学・経営学は実学でもあります。われわれは家計,企業,政府,その他あらゆる経済主体の提起する課題に対し,適切な解答を用意しなければなりません。そこで求められるものは,科学的に確証され普遍的に成立する理論に留まらず,日本であれアジアであれ当該個別社会において観察される一般的知見や経験であるかもしれません。さらに,人々の厚生の向上,経済社会的正義の実現を目指す過程においては,人文学的叡智に裏付けられた倫理的価値判断も避けられません。

 経済学・経営学において,これらの要素の結びつきは不可分です。他の社会科学分野でも,同じような理論・実践・倫理の三要素の交絡はあるでしょう。しかし,経済学・経営学ほどの緊張関係にはないと思われます。また,管理された実験が可能な自然科学では理学と工学は分離可能であり,倫理的な価値判断もある程度は研究プロセスの中に制度化して埋め込むことができます。近年は専門分化が進み,ともすれば視野狭窄に陥りがちですが,私たちは,この経済学・経営学に固有の不可分性・総合性を常に意識して,研究と教育を進めています。

 

沿革

西暦 できごと
1917 名古屋高等商業学校設立,文部省と愛知県が合意
1920 勅令551号により名古屋高等商業学校設立が公布される
1921 授業開始
1924 同窓会「其湛会(キタン会)」が発足
1925 産業実践教室落成
1926 産業調査室(現 国際経済政策研究センター)を設置
1927 『調査報告(産業調査室)』No.1発刊
1929 商業専修科を設置
1932 清川正二がロス五輪100m背泳ぎで金メダル
1944 名古屋工業経営専門学校と名古屋経済専門学校に分離
1946 名古屋経済専門学校に一本化
1947 名古屋帝国大学を名古屋大学(旧制)に改称
1948 名古屋大学法経学部(旧制)が設置
1949 新制名古屋大学経済学部が発足
1950 法経が分離され,名古屋大学経済学部が誕生
1951 『経済科学』創刊
産業調査室が『調査と資料』No.1を発刊
1959 経済学部が東山に移転
1973 産業調査室を「経済学部付属 経済構造分析センター」に改組
1977 フライブルク大学との第1回共同セミナー開催
1981 『名古屋大学経済研究叢書』1,2号発刊
1986 経済構造分析センターを「経済構造研究センター」に改組
1996 経済構造研究センターを「国際経済動態研究センター」に改組
1996 社会人リフレッシュコース開始
2000 大学院重点化が完了
2003 キタン会の後援により「オープンカレッジ」を開始
2006 「国際経済動態研究センター」を「国際経済政策研究センター」に改組
2007 名古屋証券取引所との産学連携講義開始
2009 グローバル人材育成プログラムを開始
  • 名古屋高等商業学校全景

  • 名古屋大学経済学部 誕生

  • 東山キャンパス(現在の場所)に移転