経済学部の教育

学部カリキュラム


経済のメカニズムを解明し,将来を担う人材を育成する

 「経済がわかる」とはどういうことでしょうか。インターネットで経済のことを調べるのは簡単ですが,断片的な知識の積み重ねでは不十分です。わかるというのは,なぜそういう現象がおきるのか,なぜ人々はそのような行動をとるのか,そうした原因と結果のつながりを頭に入れることです。現実の経済社会は一つの結果がまた多数の事象の原因となり,その全体は因果関係が絡み合った複雑な構造をしています。自然科学であれば,実験によって因果関係をひとつひとつ分解できるのですが,経済学・経営学では社会といった対象を丸ごと研究対象にするしかありません。そのため多彩な研究アプローチで対象に迫ることが不可欠です。経済学部では,理論的研究,歴史的研究,統計分析,制度論,事例研究など,あらゆるアプローチに出会います。この多様さが経済学部で学ぶ面白さです。そして,これによりはじめて経済という切り口から社会や人間が見えてきます。現代社会を生き抜くために真に必要な広角の視点が得られるのです。

経済学部は,「経済学の知識やリーダーとしての資質を身につけ,現代の経済社会が直面する諸課題に挑戦し,解決できる人の育成」を学部教育の基本方針としています。全学共通の教育目的に照らして設定した,経済学部の教育目標を達成するために,

  1. 全学教育科目を活用し,幅広い教養を修得する。
  2. 各専門分野の基礎知識を確実に修得する。
  3. 基礎知識を応用する能力を育成する。

という三つの基本方針を打ち立てて,経済学および経営学において必要とされる幅広い教養を学ばせ,それを基礎として学術の理論および応用を習得させるよう,カリキュラム設定をしています。また,経済学部は,経済学科と経営学科からなり,経済理論,経済政策,経済史,経営学,会計学などの分野の様々な問題の研究と教育に取り組んでいます。経済学部では,はじめの2年間で基礎的な科目を習得して「基礎的分析力」を,残り2年間では,少人数のゼミナールにおける主体的勉学によって「自主的探求力」を身につけることで,将来を担うグローバルな人材の育成を目指しています。

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ゼミでの活動  行動経済学会ポスター報告奨励賞(学部生部門)

2017年度入学生

川上 雄大さん(高橋ゼミ)

私は高橋秀徳先生のゼミに所属し、主にファイナンスを学んでいます。高橋ゼミの主な活動は、ファイナンスに関する知識を身に着けるために教科書や論文を読み、その応用として研究活動を行うことです。3年時には、コーポレートファイナンスに関する英語の教科書を読み、内容を毎週80ページ程度のスライドにまとめ、先輩や先生と内容を議論しました。それと並行して研究活動を行い、他大学の学生と研究発表会を行いました。4年時には、海外学術誌に掲載された論文を毎週読み、その内容について先生と議論しました。そして、これまでに学んできた知識を活かし、卒業論文を書き進めました。

ゼミでの活動を通して得られたものはファイナンスの知識や研究能力に限らず、もっと普遍的なものだと思います。例えば、研究においては現実を新しい角度で切り取り、それをわかりやすく伝えることが必要です。この力は研究に限らず、どこに行っても必要とされる力だと思います。その他にも、多くの学びがありました。

研究について

私は「企業は何に備えて現金を増やしているのか?」というテーマで卒業論文を書きました。近年日本企業は何らかのリスクに備えて現金を増やしていることが知られています。しかし、それが具体的に何のリスクであるかは知られていませんでした。そこで私は、テキスト分析を用いて企業が直面している具体的なリスクを定量化し、それと現金保有の関係を検証しました。

結果として、人材リスク、投資リスクおよび訴訟リスクを重視している企業が現金を多く保有していることが明らかになりました。人材と投資のリスクを重視している企業の数が近年増加しており、これが日本企業における現金の増加に影響していると考えられます。

学会の感想

私は2020年12月12日から開催された行動経済学会に参加し、学部生ポスターセッションにおいて研究発表を行いました。他の学生の発表はどれもレベルが高く、1人で研究活動を行ってきた私にとっては良い刺激になりました。私の発表は学会から奨励賞をいただくことができました。研究の内容が認めていただけたということで、とてもうれしく思っています。丁寧にご指導いただいた高橋先生をはじめ、大学に通わせてくれた両親や、研究環境を整えてくださった名古屋大学関係者の皆様に心から感謝申し上げます。

  • 報告論文:企業は何に備えて現金を増やしているのか?
  • 賞の名称: 行動経済学会ポスター報告奨励賞(学部生部門)
  • 授与者名: 行動経済学会
  • 受賞年月: 2020/12/12