付属施設・機関
経済学図書室
名古屋大学には,一般の学生が利用可能な図書館として,中央図書館と学部図書館(室)があります。中央図書館には,現在120万冊の図書が配架され,利用者は自由に接することができます。経済学図書室は,専門図書館として存在する名古屋大学の学部図書館の中でも,その蔵書の質と量,閲覧環境等において,指折りの図書館です。以下では,経済学図書室について紹介します。
まず,雑誌類の充実が上げられます。経済学及び周辺分野の雑誌を,現在,和930種,洋348種受け入れており,さらに電子ジャーナルの導入も積極的に行っています。
次に,経済統計資料,政府刊行物,企業体資料は,名高商「産業調査室」の伝統を受け継ぐ国際経済政策研究センターで専門的に収集しており,その内容は中部地区では抜きんでたものです。
EU, OECD, IMF等の国際機関刊行物,アメリカ等外国政府刊行物も経済学図書室の蔵書の特色の一つです。特にEUについては,イギリス等がECに加盟した1973年以来,経済学図書室はEU情報センターに指定され,EU公式資料の主たるものはほとんど受け入れています。
以上の新しい資料に限らず,伝統ある経済学,社会思想の古典類についてもよく収集され,経済学図書室の貴重書室には,1850年以前に刊行された図書が,革表紙の背を見せて並んでいます。中には,アダム・スミスの「国富論」,マルクスの「資本論」の初版本等も含み,経済学の歴史の礎を築いたり,あるいは世界史を動かすもとになった名著を,その出版時の雰囲気を伝える姿で見ることができます。
この他,同じ歴史関係コレクションとして,「イギリス革命文献コレクション」(イギリス革命に関する17世紀から18世紀の原資料およびその研究文献,図書310冊,マイクロフィルム28リール),小川文庫(イギリス経済学とくに重商主義者,古典学派,リカード派,社会主義派の著作330点),徳重文庫(18世紀および19世紀の西欧社会思想,特に空想社会主義,アナキズム,マルクス主義,ドイツ歴史学派の著書900冊)があります。
さらに,希望する図書や雑誌が学内にない場合も,他大学や国立国会図書等に所蔵している図書を借用したり,論文のコピーを取り寄せることができます。
国富論
著者:A.スミス/初版1776年
経済学をはじめて体系的に論じた著作。貨幣ではなく,生活資料の豊かさが富であり,その富を作りだすものは国民の労働であることを明らかにした。
資本論
著者:K.マルクス/初版1867年
資本主義社会の歴史上における特質を「資本」という概念を軸に解明した著作。労働の疎外など近代社会がかかえる数多くの問題を提起した。
雇用,利子および貨幣の一般理論
著者:J.M.ケインズ/初版1936年
有効需要の原理に基づいて,失業が存在しても,市場均衡たりうることを論証し,現代マクロ経済学・経済政策の原点となった著作。
国際経済政策研究センター
国際経済政策研究センターの起源は,名古屋大学経済学部の前身である名古屋高等商業学校(1920年創立)に設けられた産業調査室です。後に雁行形態論(flying geese pattern theory)で国際的に有名になる赤松要が,経済の研究をきちんとした実証に基礎づけられたものにするには統計などを体系的に収集する組織が必要であると訴えて,1926年に産業調査室が設置されました。そのおかげで名古屋大学経済学部/経済学研究科は,資料だけでなく,資料を収集・整理する組織も継承することになり,着々とデータを集め続けることができたわけです。80年以上にわたる地道な活動の蓄積は,たとえ大金をつぎ込んでも今からではもう決して作れない貴重な財産となっています。
もっとも,今日では単なる資料収集・整理組織ではありません。1970年代からの度重なる改組によって,研究機関としても着実に発展してきました。本センターは,研究・教育の両面で経済学研究科と緊密に協力しつつ,広い視点から実証的な調査・研究を行うように組織されています。つまり,研究科の各講座による専門領域型の研究に対して,領域横断型の研究を開拓し,その成果を内外の大学,研究機関をはじめ広く社会に還元することを任務としています。